ビジネスの現場では「PDCAを回せ」と言われる機会が多いかと思います。PDCAはPlan、Do、Check、Actionの頭文字をとっており、既存の状態をより良くするための活動を指します。PDCAで現場がうまく回る時もありますが、OODAはビジネス現場で改善サイクルを回す時にPDCAよりスピードや成果が出やすいフレームワークになります。
OODAはPDCA同様各ステップの頭文字をとっており、全部で4ステップあります。PDCAとの違い、OODAで改善サイクルを回す実行方法を紹介いたします。
目次
OODAループとは?
OODAループは、Observeの観察(みる)、Orientの状況判断(わかる)、Decideの意思決定(きめる)、Actの実行(うごく)の4つで構成されています。データを見て理解し、次に取るべきアクションプランを決めてから実際にアクションを行う。そして行ったアクションに対してデータを見るといった形でループしていくフローになります。

| Observe:観察 | 「データをみる」のが、Observe(観察)での対応内容になります。「データをみる」ためには必要なデータが蓄積されているデータベースや集計ツールからデータの抽出を行います。そして抽出したデータを目的の形で見えるように可視化を行います。 |
| Orient:状況判断 | 「データがわかる」のが、Orient(状況判断)での対応内容になります。「データがわかる」ためには可視化されたデータから何が言えるのかデータ分析を行って意思決定に必要な示唆を出します。 |
| Decide:意思決定 | 「方向性をきめる」のが、Decide(意思決定)での対応内容になります。「方向性をきめる」ためには、Orient(状況判断)で分析した結果を元に今後どういったアクションをとるのかを意思決定します。 |
| Act:実行 | 「施策がうごく」のが、Act(実行)での対応内容になります。「施策がうごく」ためにはDecide(意思決定)で決めた施策に対してステークホルダーの調整を行い、実際に施策を実行します。 |
OODAとPDCAの違い
ビジネスの現場では「OODAを回せ」と言われるより「PDCAを回せ」と言われる機会の方が多いでしょう。改善サイクルを回していくという目的は同じなため一見同じように感じますが、進め方が大きく異なります。
PDCAはPlan(計画)、Do(実行)、Ccheck(検証)、Action(改善)の4つで構成されています。まずは改善サイクルの計画をしっかりと練ってから、その計画通りに行動し結果の検証と改善を通して微調整を行っていく計画ありきのフローになります。一方でOODAはまずは現状観察から状況判断と意思決定を行い行動に移していくため情勢を判断して臨機応援に実行内容を変えていくフローになります。

この2つのどちらが良いという訳ではなく、それぞれフローの特性が違うため状況に合わせて使い分けることでより効果を発揮します。PDCAは計画ありきのため長期のスパンでフローを回すのに有効です。そのため年間計画や中長期計画など戦略を検討する際に役に立ちます。一方でOODAは現状の状況から臨機応変に対応ができるため改善サイクルを素早く回し、目標を達成していくのに非常に有効です。
戦略など上位レイヤーでの検討が必要な領域を計画(Plan)し、まずは計画通りに実行(Do)を行います。実行結果を検証(Check)できたらその結果を観察(Observe)し状況判断(Orient)を行うことで次なる改善の方向性を検討(Decide)し実行(Act)して小さくOODAを沢山回していく。そして1年など予め決めた計画スパンが来たら再度計画を見直すというPDCAとOODAが補う形でフローを回していけると理想です。
OODAループの実行手順
OODAループは素早い改善サイクルを求められる現場向きの手順であることは先に述べた通りですが、ここからは実際にOODAを回していく手順を紹介します。
実行内容によってはOODAの全てが必要でない状況も出てくるかもしれません。その場合は必要な所だけかいつまんで、OODAループを実行していただければ大丈夫です。

Orient:みる
OODAループの最初は、観察になります。設定したKGIやKPIに異常があればそれを検知し、要因を探るための分析を実施します。
異常検知
KGIやKPIなどのモニタリングを行う数値は時系列で追うことが多いかと思います。このモニタリング数値は日々変化しますが、基本一定の範囲内に収まっています。しかし時々思いがけない変化を起こし、一定の範囲外に数値が急騰・急落する時があります。この急騰・急落を検知するのが異常検知になります。
異常値には大きく分けて「外れ値」と「変化点」の2種類あります。外れ値は、一時的に通常よりもかけ離れた数値が瞬発的に現れる値です。変化点は、上昇トレンドや下降トレンドの開始点と終了点になります。
こういった異常値はビジネスチャンスであれば機会損失を起こさないように対策を打ち、危険の前触れであれば、取り返しの付かなくなる前に対策を打てると効果的です。そのため異常値はすぐに検知できるに越したことはありません。異常検知はモデル構築とスコア算出の2ステップで実施します。
時系列モデルの構築
過去データを使って時系列モデルを構築し、確率密度を求める
外れ値スコアの算出
求めた確率密度から外れ値スコアを算出する
要因分析
要因分析は異常値が生じた際に実施します。異常値になってしまった要因を探るためには、まずはKPIツリーの中から問題が発生している箇所を特定します。その問題箇所に対して、要因となる理由を深掘りしていくことで要因探索をしていきます。
要因探索は大きく分けて5つのステップで実行し、最終的には仮説をモデル化します。モデル化することで、どの数値が目的変数に影響を及ぼしているのか整理します。
ビジネス理解
KPIツリーの中から異常値としてアラートが上がった領域を特定して、分析を通して明らかにしたい事実を整理する
データ理解
分析したい要所に対してデータの特徴を探究し、構造を理解する目的でデータの探索を行う
モデル構築
データの構造が理解できたところで、モデル構築に必要なデータの準備と整形を行い、モデルの構築を行う。ここで構築したモデルはビジネスを理解するための公式となる
要因の特定
構築したモデルから異常値の要因を特定する
Observe:わかる
「Orient:みる」で異常検知と要因分析ができたら、その後の将来を予測するステップに入ります。将来を予測することによって、未来の状態を推測し、今とるべき行動が何なのか整理します。
将来を予測する際には予測モデルを作成して、何も改善策を実行しなかった場合、改善策を実行した場合でどう未来の数値が変わってくるのかを算出します。
説明変数の選択
変数同士の関係性を分析し予測モデルで扱う説明変数を決める。選択する説明変数には4P(4C)の目線で変数を追加することで、この後のモデル構築や施策効果シミュレーションの際に網羅的に効果の把握や施策の立案がしやすくなります。
| 企業目線 | 顧客目線 | 検討内容 |
|---|---|---|
| 製品 | 顧客価値 | 顧客に提供している商品・サービスの内容 |
| 価格 | コスト | 顧客に提供している商品・サービスの価格 |
| 流通 | 利便性 | 顧客への提供方法 |
| 販売促進 | コミュニケーション | 顧客へのプロモーション方法 |
予測モデルの構築
説明変数を使って予測モデルを構築する
将来の予測
構築した予測モデルを使って将来を予測する。施策の実施有無それぞれでシミュレーションを実施し、施策による効果を把握します
モデル評価
構築したモデルは一発では完璧なモノは出来ないので、必要に応じてアップデートをかけていく
Decide:きめる
「Orient:みる」「Observe:わかる」を通して、課題点と要因、またそれに対しての施策案と施策効果予測が出揃ったかと思います。出揃った情報は課題管理表に一覧化していきます。そして一覧化した対策案に対して定量的な評価を行うことで、実施する施策を決めます。やらないことを決め、やることにリソースを集中させることでより大きな成果を出すことができます。
課題整理
課題整理のフェーズではデータ分析を通じて表面化された課題と要因、またそれに対しての対策案と施策実施による効果予測を一覧表に記載していきます。一覧化したリストはブランドをより発展させるための知恵袋となり、より効果の大きい施策が何か一覧で横並びすることができます。
優先順位整理
課題整理が終わったら整理した課題に対する対策案の優先順位を整理していきます。優先順位をきめる際はどの施策の組み合わせが最も大きく利益を得られるかといった定量評価で優先順位を整理して行きます。
しかし定量的に評価が難しい課題や対策案の場合、AHP分析を用いて定性データを定量的に評価を行えるようにし、優先順位を決めます。
利益分析
施策効果利益 = 施策効果による売上増加分 – 施策費用 – 施策実行に係る固定費
| 売上増加分 | 改善案を実行することで得られる売上増加分 |
| 費用 | 改善案を実行するのに必要な施策費用 |
| 固定費 | 改善案を実行するのに必要な人件費など固定でかかってくる費用 |
ビジネスインパクトが大きく売上額が大きくても沢山の時間と施策費用がかかっていれば利益は出ません。改善をする目的はマーケティング利益の最大化のため、施策実行に伴う費用対効果は注意して見る必要があります。限られたリソースの中で最大限のパフォーマンスを出せる施策がどれなのか見極めながら優先順位を整理していきます。
AHP分析
施策が利益などの分かりやすい指標で評価が難しい場合は、AHP分析を用います。必要な評価基準を選定し、評価基準毎に検討した対策案を評価する必要があります。評価の高い対策案は定量評価から判別できますが、定量的に判断できない要素は人間によって判断します。
評価基準のウェイト判断
評価基準に対して、重要度に関する一対比較評価をし、評価基準のウェイトを計算する
代替案のスコア判定
評価基準毎に、代替案を一対比較評価をし代替案のスコアを計算する
対応策のレコメンド
代替案を総合評価し、最も総合評価の高い代替案をレコメンドする
Act:うごく
対策案を整理し優先順位も決まったらあとはそれを実行するだけです。実行手段は商品・サービス改善、価格適正化、流通最適化、販売促進施策実施の大きく分けて4分類になるかと思います。施策実行後は対策案の実行に伴いどれだけ経営数値にインパクトを与えたか把握して、再度改善サイクルを回していきます。
施策実行
販売促進施策
販売促進では顧客へ商品やサービスの認知を広め、サービスを長期的に利用してくれるように施策を実行していきます。施策の実行手段は大きく分けて2通りになります。1つめは顧客との接点の取り方を改善するチャネル改善、2つめは顧客が閲覧するコンテンツの改善になります。またこの2つの手段のどちらにでも適用できるABテストや一時的な促進施策としてのキャンペーンもあります。
| 施策分類 | 項目 | 施策内容 |
|---|---|---|
| 共通 | ABテスト | 顧客との接点となるチャネルやコンテンツに対して複数のパターンを用意し、どのパターンが最適かをテストする |
| チャネル改善 | SEO(オウンド施策) | ウェブ検索からの流入を最適化する |
| チャネル改善 | MEO(オウンド施策) | マップ検索からの来訪を最適化する |
| チャネル改善 | 広告(ペイド施策) | 広告からの流入を最適化する |
| チャネル改善 | 口コミ(アーンド施策) | SNS等でユーザーの発信しやさを調整する |
| チャネル改善 | MA | 見込み客獲得・育成までのシナリオ設計を改善する |
| チャネル改善 | SFA | 見込み客に対して、商談・契約成立までのシナリオ設計を改善する |
| チャネル改善 | CRM | 既存顧客に対して、LTVを向上するためのシナリオ設計を改善する |
| コンテンツ改善 | LPO | 顧客の最初の接点となるランディングページを最適化する |
| コンテンツ改善 | 来店率最適化 | 店舗前の交通量や店舗視認数から入店する割合を改善する |
| コンテンツ改善 | 導線最適化 | 顧客が接するコンテンツに対して導線を改善することで目的地へ到達しやすく改善する |
| コンテンツ改善 | オンライン接客 | チャットやコンテンツ分岐など顧客とのOne to Oneの接点を最適化する |
| コンテンツ改善 | オフライン接客 | 店頭での顧客とのOne to Oneの接点を最適化する |
| コンテンツ改善 | ページ/スクリーン最適化 | Webサイトのページやアプリのスクリーン画面のUIを最適化する |
| コンテンツ改善 | 表示速度最適化 | 顧客が接するコンテンツの表示スピードを改善し離脱の改善をする |
| コンテンツ改善 | EFO | 最終的な申し込み(購買)を行うエントリーフォームの最適化を行う |
効果検証
施策を実施したら施策に効果があったのか無かったのかの効果検証を行います。効果検証は大きく分けて3つのステップで実施し、施策によってどれだけリフト効果をもたらしたのかを明らかにします。
仮説設定
施策を実施した背景や課題点に対して抱いていた仮説を明確化する
仮説検証
設定した仮説に対して正誤を検証します。検証を行う際は原因があって、その原因の結果に関係性があるかを求めます
結論
仮説検証を通して出た結果から結論を出します。検証結果をもとに施策実施に伴いどれだけリフト効果があったか定量的に明らかにします
まとめ
OODAは既存のビジネスをより良く改善していくためのフレームワークです。データを観察して理解し、改善の方向性整理と実行という4ステップをぐるぐる回していきます。改善活動を通してビジネスはグロースし続けていくでしょう。
一方で改善活動を行わない現状維持ではビジネスは衰退していくのみです。ビジネスを長期にわたって展開していくためには、常に改善活動が求められますので、OODAに沿った形で改善活動が促進されると幸いです。

