自社のマーケティング戦略や戦術を練るのにまず始めにしないといけないことは、現状のマーケティング活動の整理になります。ブランドによっては各マーケティング活動が部署毎にバラバラに実行されていて全体像を把握するのが容易では無いケースもあるでしょう。その際にカスタマージャーニーマップを使うと現状の活動の整理やそれに伴う顧客行動の可視化も行いやすくなります。
また可視化を行うことでマーケティング活動の中で上手くできているところや逆に上手くできていないことも把握することができます。カスタマージャーニーを使って可視化をすることは今後のマーケティング戦略を考える際の指針にもなるでしょう。ここでは自社ブランドのカスタマージャーニーの可視化方法とそれをもとにボトルネックを把握する方法をお伝えします。
目次
カスタマージャーニーが自社ブランドのプロモーション戦略を可視化するのに優れている理由
カスタマージャーニーは自社ブランドを知ってもらってから購入、ファンとへと昇華していくまでの流れに沿って可視化を行っていきます。各フェーズでブランドがユーザーに対してどうブランドメッセージを伝えているのか、どれくらいの顧客がそれに反応してくれているのかを可視化しやすくなります。そのため各フェーズで担当者が異なっていても一気通貫してブランドのプロモーション活動を把握することが可能になります。
また各フェーズで担当が異なっている場合、部分最適に陥ってしまうこともざらではありません。その際にカスタマージャーニーを使って、全体像をマクロの視点で捉えると違和感を察知しやすくなります。ユーザーはブランドを認知してから購入、ファンとなっていく過程においてブランドと数多くの接点を持ちます。各接点で共通したメッセージを送り続けなければ、ユーザーはブランドに対して不信感を抱いてしまうかもしれません。
そのためブランドから発信するメッセージでユーザーに違和感を与えないようにすることは非常に重要で、それを可視化するのにカスタマージャーニーが優れているのです。
顧客の行動フローを可視化する方法
カスタマージャーニーを使って顧客行動を可視化するには、自社の販売チャネルと接点を持った顧客の行動ログを抽出する必要があります。顧客の行動ログが分析できるようにデータウェアハウスなどにキレイにログがまとまっていれば、そこからデータを抽出すれば良いでしょう。
しかしブランドによっては、顧客の行動をログとして蓄積しておらず抽出できるデータが無い場合もあります。その場合はアンケート調査などを行いカスタマージャーニーの可視化を行っていきます。
可視化すべき顧客行動
カスタマージャーニーはブランドを知ってからファンになるまでの全てのフローの行動を図示しています。そのためブランドを認知したが、興味を抱かなかったユーザーを対象にしてしまうとカスタマージャーニーを可視化することができません。ブランドを支持してくれる顧客の行動を可視化することでロイヤリティが高いユーザーのカスタマージャーニーを作成することができます。
またロイヤリティが高くないユーザーを抽出することでロイヤリティの高いユーザーとの間でのジャーニーのギャップを見つけることができるかもしれません。そのため比較対象顧客としてであればロイヤリティが高くないユーザーを抽出する意味はあります。
顧客行動を可視化するための分析手法
可視化すべき顧客が選定出来たら、その顧客の行動をログを見て可視化していきます。可視化の方法は「ユーザーの行動ログをベースにフローを可視化する方法」と「ロイヤリティの構成要素を把握する方法」と大きく分けて2つあります。どれか1つに絞る必要は無く、必要に応じて必要な分析手法を選択します。
| エボークトセット調査 | 行動検討時に頭に浮かぶ好意的な選択肢の集合体の割合を把握する |
| N1調査 | 1人のユーザー行動を見てそのプロセスを把握する |
| プロセスマイニング | 全ユーザー(一部のユーザー)行動を見てそのプロセスを把握する |
| アトリビューション分析 | ユーザーがCVに至るまでの間接的に影響を与えた流入経路を把握して、チャネルごとの貢献度合いを把握する |
| NPS調査 | 顧客のロイヤリティを測る |
エボークトセット調査
エボークトセット調査では特定のカテゴリーにおいて顧客が想起するブランドの構成を把握する方法になります。顧客が何か商品を購入する際に認知をして好意を持っているいくつかのブランドから購入の選択に至るため、「どういったブランドを連想するのか」「どこに好意を持っているのか」を調査していきます。
対象者の抽出
ブランドが所属する市場定義に当てはまる調査対象ユーザーをスクリーニングし対象者を抽出します。
調査票の設計・作成
対象者に対して特定カテゴリーでのエボークトセットを調査するアンケートを作成します。アンケート内容は該当カテゴリーの購入目的、知名・想起集合に入っているブランド、第一想起ブランドの購入検討理由の大きく分けて3つの項目でアンケートを実施します。
調査結果の解析
アンケート結果をもとに特定カテゴリーにおけるブランドカテゴライゼーションを可視化します。自社ブランドの認知・興味関心レベルを市場規模から人数として割り出します。
N1調査
N1調査ではブランドのロイヤリティが高い1人のユーザー行動を認知からファンに至るまでのジャーニーを把握する方法になります。顧客の行動ログから分析をする方法とロイヤリティの高いユーザーにインタビューを行って分析する方法の2通りがあります。インタビューの場合、回答者のバイアスや記憶の薄れに伴い正確なカスタマージャーニーの可視化は難しいかもしれません。行動ログがあれば行動ログで抽出することをおすすめします。
また行動ログとインタビューを掛け合わせて、その行動を起こした背景をインタビューで伺うハイブリット型もあります。行動の背景や感情を推測ではなく、実際にユーザーに確認できるため一番精度は高くなります。
データ抽出
N1の対象となるユーザーをランダムに20人程度抽出します。抽出するユーザーはロイヤリティが高い顧客はマストですが、比較対象として別セグメントの顧客やユーザーを抽出しても構いません。
データ閲覧
抽出したユーザーのログデータを1人1人見て、行動を観察します。ログデータを見る際は、行動の履歴(順番)、接触した時間、期間などにも注意します。
パターン化
抽出したユーザーの個々の動きからその行動の背景と文脈、心理を精査したうえで、行動をパターン化します。行動をパターン化する際はカスタマージャーニーの各ステップに沿った形で行動を分類します。
プロセスマイニング
プロセスマイニングでは全ユーザーもしくは対象のユーザーを選定して、そのユーザーの時系列の行動ログをプロセスマイニングツールに取り込むことで、対象ユーザーの行動をパターン化して表示してくれます。取り込むデータをロイヤリティの高いユーザーと低いユーザーで分けることで、各行動の違いも把握することが可能になります。
データの取り込み
プロセスを可視化したいデータをプロセスマイニングツールに取り込みます。
データモデルの作成・プロセスの可視化
取り込んだデータに意味づけを行い、行動プロセスを可視化します。
コンフォーマンスチェック
理想のターゲットプロセスを定義して理想のプロセスの割合を確認したり、非理想のプロセスと比較してギャップを確認します。
アトリビューション分析
アトリビューション分析は、ブランドを認知してからコンバージョンに至るまでの間でどういったチャネル接点を持っているかを可視化できる分析手法です。認知に強いチャネルとコンバージョンに強いチャネルは異なってくるため、カスタマージャーニーの各フェーズで効果を発揮するチャネルを把握することが可能になります。
モデルの選択
チャネルを評価するには複数のモデルがあります。カスタマージャーニーの各フェーズを把握しやすいモデルを選択し、見比べるために特徴のあるモデルを採用します。
モデル比較
選択したモデルに対して、どのチャネルがカスタマージャーニーの各フェーズで強みを発揮するのか整理します。
NPS調査
NPS調査では、行動ログでは可視化出来ない顧客の感情部分を可視化しに行きます。感情を可視化することで、その行動に至った背景を把握しやすくなります。NPS調査は全体の評価を調査するものと、個別の顧客体験を深掘りして調査する2種類があり、2種類の調査を段階的に行っていきます。
| リレーショナル調査(Relational survey) | 総合的な関係性を測定する |
| トランザクショナル調査(Transactional survey) | 個別の顧客体験を測定する |
対象者の抽出
NPS調査を行う対象者を抽出します。既存顧客や特定のアクションを起こしたユーザーなどカスタマージャーニーを可視化したいユーザーをランダムに抽出します。
調査票の設計・作成
対象者に対して実施するアンケートを作成します。アンケートの内容は基本的には3項目でブランドの推奨度、ブランド体験と推奨度への影響、その影響を与えた理由になります。
調査結果の解析
目的変数とブランドの推奨度で単回帰分析を行い推奨度と目的にどういった関係性があるのか把握します。また関係性が把握できたら何がブランド推奨度をあげているのかの要因を探ります。ブランド推奨度を目的変数として、ブランド体験を説明変数にした際に各ブランド体験の影響度を可視化します。
自社ブランドのプロモーション手法をマッピング
顧客行動のフローやロイヤリティを構成している要素を把握できたら、カスタマージャーニーマップにまとめていきます。まとめた各フェーズに対して、顧客接点や行動、心理を整理することで自社のプロモーション状況が一覧化されます。
顧客行動を5Aにまとめる
5Aは「マーケティングの神様」と称されるフィリップ・コトラーが提唱した理論です。ブランドを認知(Aware)し、訴求(Appeal)によって自分にとって好ましいと思う複数のブランドに惹きつけられる状態になります。そして惹きつけられたブランドの中から魅力を感じたブランドを調査(Ask)し、自社ブランドが選ばれたら購買といった行動(Act)が生じます。ブランドに対して強いロイヤリティが生じると熱心に他者に推奨・奨励(Advocate)を行なっていきます。この各フェーズの頭文字をとって5Aとしてまとめられています。
| 段階 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 無関心 (現状) | 無関心 | ブランドについて知らない、もしくは必要としていない状態 |
| 認知 | 認知 | 顧客は過去の経験やマーケティング・コミュニケーション、それに他者の推奨から、受動的に沢山のブランドを知らされる |
| 訴求 | 興味関心 | 顧客は自分が聞かされたメッセージを処理し短期記憶をつくったり、長期記憶を増幅したりする少数のブランドだけに惹きつけられる |
| 調査 | 情報収集 / 比較・検討 | 顧客は好奇心に駆られて積極的に調査し、友人や家族から、またメディアから、さらにはブランドから直接、追加情報を得ようとする |
| 行動 | 導入可否決断 / 無償・有償利用 | 追加情報によって感動を強化された顧客は、特定のブランドを購入する。そして、購入・使用・サービスのプロセスを通じてより深く交流する |
| 推奨 | 満足 / 継続 / 口コミ(肯定的・否定的) | 時とともに、顧客は当該ブランドに対する強いロイヤリティを育む。それは顧客維持、再購入、そして最終的には他者への推奨に現れる |
顧客行動
5Aの各ステップでのユーザー行動を定義します。N1調査やプロセスマイニングで分析した結果を元にユーザーがどういう状態になったら5Aの各フェーズに入ったのかを整理します。
ここで整理した定義に基づいて、これ以降のマッピング内容も決まってくるため非常に重要な整理項目になります。
ボリューム
顧客行動で定義したそれぞれのフェーズでどれだけユーザーや顧客がいるかをデータで集計します。
顧客心理
5Aの各フェーズで顧客が考えていること(思考)や感情、行動・態度を左右する情報の解釈(パーセプション)を整理します。N1調査やNPS調査で分析した内容をもとにマッピングしていきます。
顧客接点
ブランドと顧客が持つ接点を5Aの各フェーズで整理します。接点ではチャネルとコンテンツの組み合わせでメッセージを顧客に届け、新しい認識(知覚刺激)を提供しています。各フェーズでどんなチャネルから集客し、どんなコンテンツを閲覧しているかをマッピングします。
提供価値・リスク
各フェーズで顧客にそのコンテンツを提供する価値(顧客にとってのベネフィット)とそれを提供することで生じるリスクを整理します。
各フェーズで価値を提供しなければ、顧客の態度変容は起きません。一方で何かを提供する際にはそれなりのリスクが伴います。どういったリスクと隣り合わせで価値を提供しているかも整理していきます。
ボトルネックの把握
5Aに則って各フェーズにどれくらいの人数がいるかを把握できたらブランドの弱点が見えてきます。全体評価として2つ、各フェーズ間での評価として4つあり、どこにボトルネックがあるか把握することが可能になります。
5Aの各指標
ブランドのプロモーション状況を評価するのに6つに指標があります。前工程で、5Aの各フェーズでどれくらいのボリュームがあるか整理できていますので、この数値を使ってプロモーション状況の評価を行っていきます。
| 分類 | 指標 | 計算式 |
|---|---|---|
| 全体評価 | PAR(購買行動率) | 購買行動をとる人の数÷認知している数 |
| 全体評価 | BAR(ブランド推奨率) | 自発的に推奨する数÷認知している数 |
| 各タッチポイント毎の評価 | 誘引力 | 訴求÷認知 |
| 各タッチポイント毎の評価 | 好奇心 | 調査÷訴求 |
| 各タッチポイント毎の評価 | コミットメント | 行動÷調査 |
| 各タッチポイント毎の評価 | 親近感 | 推奨÷行動 |
PAR(購買行動率)
企業が自社を認知している人々を購買行動に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを表す指標になります。
BAR(ブランド推奨率)
企業が自社を認知している人々を購買行動に「コンバート」することにどれくらい成功しているかを表す指標になります。
誘引力
ブランドが認知されているうち興味関心を頂かせた割合になります。市場のカテゴリ中で自社ブランドがエボークトセットに入った割合と置き換えることも可能です。
好奇心
興味関心を抱いた顧客がブランドを深く知りたいと思った割合になります。検索や来店などユーザーの調査という行動に現れます。
コミットメント
複数のブランドを調査し比較検討した結果、自社ブランドが選ばれた割合になります。
親近感
購買を行った顧客が第三者へ推奨した割合になります。ブランドの使用体験で良かったものは自然と第三者に伝えたくなるものです。
ボトルネック領域の特定
指標として抽出することで、ブランドの現況が可視化されました。表示された数値に対して自社ブランドのプロモーション状況にどこにボトルネックがあるのか特定して今後の戦略立案の参考にしていきます。
理想的なカスタマージャーニーのパターン
自社ブランドのカスタマージャーニーにどこにボトルネックがあるのかを判断するには、比較対象となる理想型のパターンが必要です。

引用:マーケティング4.0時代のカスタマージャーニーの類型
では理想のカスタマージャーニーはどういったパターンかというと「左右対称の蝶ネクタイ型」になります。蝶ネクタイ型のカスタマージャーニーはあるブランドを認知しているすべての人が、そのブランドの高い評判ゆえに自ら進んで当該ブランドを推奨するという状態です。これはつまり、そのブランドが1という完璧なBARスコア(認知=推奨)を達成するということです。加えて、当該ブランドの訴求力はきわめて強いのでブランドに惹きつけられる全ての人がそれを購入します(訴求=行動)。明確なポジショニングと適切な好奇心レベルのおかげで、当該ブランドに惹きつけられる人は、もっと調べる必要があるとは必ずしも思わないからです。
しかし現実問題、こんなにキレイなカスタマージャーニーは存在しません。5Aを提唱したフィリップ・コトラーはどの産業にも存在する4つのパターンがあると述べています。自社のブランドに近しいものを選び、ベンチマークにしつつも蝶ネクタイ型を目指していくのもありでしょう。

引用:“5A Loyalty診断”サービスの紹介 第2回 5A診断とは(5回シリーズ)
| タイプ | 顧客行動 | 産業特性 |
|---|---|---|
| ドアノブ型 | ・ブランド選考は過去の経験値によるところが大きい ・ブランドに対する愛着度が低い | ・積極的なブランド構築とマーケティングコミュニケーションの実施 ・多くの競合ブランドが存在 |
| 金魚型 | ・購入前に時間をかけて徹底的に調査する ・複数の利害関係者が関与する | ・コモディティ化した市場でオファーも似通っている ・競合ブランドの中に似通ったポジショニングが存在 |
| トランペット型 | ・購買顧客が購入決定に深く関与する ・ブランドのクオリティを信用している | ・クオリティからの連想で信用できるというイメージを持っている ・強い口コミの影響が市場を形成している |
| 漏斗型 | ・購入はたいてい計画的に行われる ・売り手の主張ではなく、実際の経験を信用 | ・競合ブランドとの比較が容易 ・製品は強力な顧客経験とセット |
ドアノブ型
最も多くみられるパターンです。好奇心レベルが低いにも関わらずコミットメントが高いことが特徴です。消費者向けパッケージ製品の産業に多くみられます。
提示小売金額が低いため顧客はブランドの調査や評価に時間をかけず、行動に移します。購入は頻繁で習慣的に行われるため過去の経験から特定のブランドを選好します。しかしブランドに対しての愛着度は低い傾向にあります。そのためブランドの推奨は低い傾向にあります。
市場としては何百万人もの顧客をめぐって多数のブランドでシェアを奪い合っています。ブランドは訴求力のあるマーケティング・コミュニケーションで顧客を引き寄せるため巨額の資金を使う傾向にあります。また購入時点でのアベイラビリティも重要な決定要因になります。顧客はブランドに引き寄せられていなくても、購入時点で入手可能なブランドの中から選択を行います。
金魚型
高い好奇心(訴求 < 調査)が特徴です。主に企業間取引(B to B)で見受けられます。
顧客はブランドを選ぶ際にいくつもの要因を検討します。コモディティ化された市場のためブランド間での差別化が小さく、顧客は1番良いオファーが何かを検討するために時間を要します。長く利害の異なる多くの関係者が関わることも購入プロセスが長くなってしまう要因になります。
売り手も買い手も専門化されており、少数の売り手が少数の買い手に販売しています。多くの場合は、顧客との親密さが決定要因になります。
トランペット型
親近感が高いのが特徴です。高級車、高級腕時計、ブランドバックなどのライフスタイルカテゴリで多く見受けられます。
カテゴリ・ブランドに対してクオリティの高さを信頼しており、自分がそのブランドを使っていなくても当該ブランドを進んで推奨します。そのため購入者よりも推奨者が多くなるのも特徴的です。
市場は小規模でニッチにビジネスを展開しています。希少性がブランドの訴求力を高めることからチャネルやアベイラビリティを高める施策を行わないのもこの市場の特徴です。
漏斗型
しっかりと計画を行なって購入が行われることが多いのが特徴です。耐久消費財やサービス産業で多く見受けられます。
顧客が購買から推奨までカスタマージャーニーの全てのフェーズを経過するのはこのパターンのみです。全てを経験するということはカスタマージャーニーの全てのフェーズで離脱する可能性を含んでおり、総合的な顧客体験が重要になります。
ブランドスイッチが少ない市場であるが、顧客体験の質が低下したときは他のブランドや上位のブランドを検討しブランドスイッチを誘因します。
ボトルネック領域への対策
自社ブランドのカスタマージャーニーの形からどこにボトルネックがあるか特定できたら、そのボトルネックに対して対策を講じていきます。
| 誘引力 | ・ポジショニングの見直し ・マーケティングコミュニケーション |
| 好奇心 | ・コンテンツマーケティング ・コミュニティマーケティング |
| コミットメント | ・チャネルマネジメント ・セールスフォースマネジメント |
| 親近感 | ・ロイヤリティプログラム ・顧客ケア |
誘引力
ほとんどの顧客がブランドをよく知っているのに魅力的だとは思っていない場合、当該ブランドには誘引力の問題があります。
昨今のデジタル時代には、人間らしさのあるブランドが最も魅力的になります。顧客は人間中心のブランド(人間のような特性を持っていて、顧客と対等な友人としてインタラクションできるブランド)をますます求めるようになっています。またストーリーも大事です。自社の英雄的なミッションに関するすばらしいストーリーを語ることで、顧客の共感を得ることも可能です。
また顧客の厳密なニーズに合わせて製品・サービスをパーソナライズできるブランドにも、多くの顧客が引きつけられています。
ブランドが強い訴求力をもたらすためには、本物の差別化要因を持っていることが重要です。差別化要因が挑戦的かつ独創的で、常識の枠を超えていればいるほど、ブランドの訴求力は大きくなります。
好奇心
カーネギーメロン大学のジョージ・ローウェンスタインは、好奇心のきわめて単純な定義を打ち出しています。それは「知っていることと知りたいこととの情報ギャップから生じる欠乏感」であると。また心理学者のジャン・ピアジェとダニエル・バーラインは、驚きと好奇心の相関関係を発見しました。ピアジェは、好奇心は逆U字曲線を描くと主張し、人間は、期待していることと実際に経験することとの間に最適レベルの乖離があるとき、最も強い好奇心を抱く。ほとんど、もしくはまったく期待していないときには好奇心をそそられる理由がないが、強い期待を持っているときには、「真実」の発見を避けようとする傾向があり、やはり好奇心のレベルは低い。バーラインも、人間は驚きに直面すると関心をそそられ、さらに探求しはじめると主張しています。
この主張を応用するとマーケティング活動では、顧客に魅力的な知識を適量与えることによって好奇心を生み出すことができると考えられます。つまり好奇心を生み出すためには、コンテンツ・マーケティングと呼ばれるアプローチが最適です。顧客の生活に関係があり、しかも特定のブランドと強く結びついているコンテンツを作成、配信する一連の活動になります。
顧客の好奇心を利用するために、顧客が検索すればいつでも簡単に見られるような形でコンテンツを掲載し、コンテンツは「検索可能」で「シェア可能」であるべきです。
コミットメント
顧客のコミットメントを揺るぎないものにできるかどうかは、販売チャネルのアベイラビリティと質の高い経験を提供する能力にかかっています。そのためにはタッチポイントに関係なく、顧客にオンラインとオフラインを統合した経験を提供するオムニチャネル・マーケティングが必要です。
親近感
ほとんどの顧客はブランドの使用やアフターサービスを含む購入後のパフォーマンスが購入前の主張と一致しているかどうかを評価します。実際の体験が期待と一致したり期待を上回ったりすると、顧客は親近感を育み、忠実な推奨者になる可能性が高くなります。その結果、顧客から顧客生涯価値(CLV=顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の指標)や顧客紹介価値(CRV=顧客が企業に新規顧客をもたらす影響力の指標)を引き出すことができます。
購入後経験を高めるために、タッチポイントを拡充し、顧客と通常の交流を超えた交流をできるようにすると良いでしょう。また実際の製品から得られる喜びや実際のサービス経験に加えて、顧客エンゲージメント・プログラムの導入も考えられます。
ブランドが人間らしさを持つようになるにつれて、顧客エンゲージメントがより重要になってきます。企業と顧客の間の壁を打ち破り、友人としての両者のインタラクションを可能にする必要があります。インタラクションの手段は、さまざまなタイプの顧客サービス・インターフェース、ソーシャル・メディア・インタラクション、ゲーミフィケーションなどいくつか考えられます。
まとめ
カスタマージャーニーは、自社ブランドの顧客の行動フローやプロモーション状況を可視化するのには非常に便利です。また顧客が自社ブランドにどういった理由でロイヤリティを抱いてくれているか把握することでカスタマージャーニーの各フェーズでのコミュニケーションがあるべき形なのかの確認にもなります。
そして現況を把握できるとどこにボトルネックがあるのかも把握することが可能です。ボトルネック領域に対して、対策を打っていくことでブランドはより顧客ロイヤリティを高めていくことができるでしょう。

