企業の販促活動で売上を上げるためには新規顧客から売上を上げる方法と既存顧客の再購入の大きく分けて2種類になります。新規獲得に掛ける販促コストは既存顧客に掛ける販促コストの5倍とも言われており、既存顧客と良好なリレーションシップを築くことが利益を最大化させるために重要であることがわかるかと思います。既存顧客との継続的にコミュニケーションを取っていくにはカスタマーサクセスという概念が非常に重要であり、それを実現することができるツールがCRMになります。
CRMツールを有効に活用するには事前の調査や設計から始まり、目的にあった利用ができるように必要なデータとつなぎ合わせた実装が必要になります。どんなに高度なツールを導入しても使い方を間違ってしまっては、顧客と良好な関係を築くどころか顧客離れに繋がってしまいます。こちらではCRMツールを有効に活用できるように設計から実装、改善までの方法をお伝えします。
目次
カスタマーサクセスが重要な理由
カスタマーサクセスの可能性
カスタマーサクセスは「カスタマー」と「サクセス」の2語を組み合わせた造語になります。カスタマーとは既に自社ブランドを購入したことがある顧客になります。そんなカスタマーに対して成功を届ける(自社ブランドが無くてはならない存在となり、個の利益につながった状態)のが、カスタマーサクセスの役割になります。
売上が0円で事業を開始した場合に初月に新規カスタマー100人から合計100万円の売上を獲得し、次月以降も継続的に売上が積み上がっていく前提でシミュレーションをしたイメージになります。開始直後の数年は解約で取り逃す売上はそう多くないが、5年目を超えてくると解約の比率が小さくても新規契約で穴埋めするには非常に困難な差が生まれています。またカスタマーから毎月5%や10%分のアップセルないしクロスセルを獲得した場合に追加で積みあがる売上よりも解約率の5%や10%による売上損失の方が大きくなります。
カスタマーのケアが十分に行き届かず、解約率が高まると売上減少につながります。売上減少を新規顧客の獲得でカバーしようとすると売上の成長スピードは大幅に減退します。一方で解約率を抑止しながら買い増しを促せると売上の成長スピードは大幅に成長します。カスタマーサクセスに真摯に向き合うことは自社ブランドの売上促進に繋がるのです。
カスタマーサクセスがもたらす効果
カスタマーサクセスのレベルが上がってくると提供するブランドはカスタマ利用者が、自分にとって嬉しい成果を得られるのであれば、自分の個人データをプロバイダーが取得することを許すーを虜にしていきます。この虜にするのに必要となるのが、リテンションモデルです。下記に示す4つの観点全てを充たすサービスやプロダクトをリテンションモデルと定義することができます。
このリテンションモデルが成立するブランドは、「ライフタイムバリューの最大化」による売上拡大と「カスタマーのデータ利用」による資産の拡大、「人的資本依存からの脱却」によるスケーラリビティ体制の構築という3つの側面で効果をもたらします。
ライフタイムバリューの最大化
ライフタイムバリュー(LTV)は顧客生涯価値であり、1人のカスタマーがブランドに落としてくれる平均売上になります。リテンションモデルが実現することで、カスタマーの事業が成長したり生活がより良くなることでブランドは無くてはならない存在となりLTVは自然と高まっていきます。またLTVは「平均」売上です。そのためカスタマーに成功を届けられないと判断した場合は、サービスやプロダクトを提供しないという勇気も必要です。そうすることで顧客1人あたりの関係性はより長くなりやすくなります。
カスタマーのデータ利用
カスタマーの成功につながる効果的な育成と支援を行いたい場合にカスタマーの行動履歴データは非常に重要になってきます。カスタマーの動きがわからなければ、カスタマーの育成や支援はできません。ただ個人情報のプライバシー保護の動きは年々強化されており、簡単にデータを収集するのが困難になってきました。
しかし、リテンションモデルが成立すれば、より良いプロダクトやサービスを受けられるのであれば、カスタマーはブランドに対してデータを渡すことを拒まないでしょう。データの数と質が揃うことで、カスタマー理解の解析度も上がり、より長期的な関係を築いていけることができます。
人的資本依存からの脱却
カスタマーが増えれば、その分ブランドがサポートしなければいけない範囲も広がっていきます。サポートしなければいけない範囲が広がることで、対応リソースも右肩上がりで増やせれば問題無いですが、人的リソースを増やすことはそんなに容易ではありません。しかしリテンションモデルが成立するブランドには、虜になっているカスタマーがいるためカスタマー間での互助が促進されます。カスタマーが増えた分、単純に対応リソースを増やさなくても、カスタマーが抱えている課題をカスタマーが解決するようになったり、カスタマーが新規のカスタマーを呼んできてくれる好循環が生まれやすくなります。
CRMの効果・機能
CRMはCustomer Relationship Managementの略であり、「顧客関連性管理」と日本語では略されます。プロダクトやサービスを提供するブランドが、カスタマーとの間に親密な関係性を作り、自社ブランドを継続的に使って頂いたり、アップセルやクロスセルを促進していくのに役立ちます。CRM活動を促進していくためにはCRMツールを活用することで、小さなリソースでも大きな威力を発揮することが可能となります。
CRMがカスタマーサクセスに与える影響
リテンションモデルが成立するブランドはカスタマーデータが集まってきやすいのは前述した通りです。しかしそのデータを生かすも殺すもブランド側のデータリテラシーに大きく左右されます。様々なカスタマーのデータは蓄積しているだけでは何も効果を発しず、そこからカスタマーのニーズやインサイトを掘り起こし、カスタマーとの接触方法を変えていく必要があります。しかし現実問題としてカスタマー1人1人に対して、十分なケアをするにはどうしても膨大なリソースを必要としてしまいます。ただ1人1人に対してのケアをITツールを活用することで、人的リソースだけに依存しない仕組みを構築することができます。CRMツールにはカスタマーサクセスを助長する機能がいくつかあり、カスタマー1人1人に寄り添った施策を実行することができます。1人1人に寄り添った施策が実行出来れば、カスタマーの反応データが蓄積され、そのデータを使ってカスタマー理解と接し方を変えることができカスタマーサクセスに貢献する、そしてまたデータが蓄積されるといったように正のループを回し続けるためにはCRMは欠かせないツールとなります。
CRMの機能
CRMツールは国内外合わせても沢山の種類があります。しかしCRMツールを入れることで出来る事は「カスタマー管理・カスタマーコミュニケーション」に集約されます。自社のカスタマーの状況を把握しその状況に応じてコミュニケーション手段を変える機能を担うのがCRMツールになります。
| カスタマー管理 | 自社ブランドの購入履歴があるカスタマーの基本情報や行動履歴を管理 |
| PUSHコミュニケーション | メールやSNSなどカスタマーと複数のチャネルを通してコミュニケーションを取る |
| PULLコミュニケーション | カスタマーからの問い合わせなどカスタマーからブランドに向けてにメッセージを受け取り管理 |
成果の出るCRM設計方法
CRM設計は「CRMツール導入」「シナリオプランニング」「CRMツール設計・実装」「効果測定・改善」の大きく分けて4STEPで実施していきます。
CRMツール導入
実施したい施策内容に応じて最適なCRMツールを選定し、必要な機能が使えるようにツールの利用範囲の定義と環境構築を行います。
シナリオプランニング
自社ビジネスの現状を分析し、必要なシナリオの洗い出しと各シナリオの設計を行います。
CRMツール設計・実装
設計したシナリオをCRMを用いて配信できるように設計と実装を行います。
効果測定・改善
実装して配信されたシナリオはユーザーの反応を見て、最適なシナリオにブラッシュアップしていきます。
CRMツールの導入
CRMを使ってカスタマーとコミュニケーションを行う際にまず初めに、利用するCRMツールの選定とそのツール内で使用する機能を定義します。CRMには様々なツールがありますが、自社のビジネスに最適なツールを選定しておかないと実装時点でやりたいことが実現できないことに直面してしまうため、利用するツールの選定は非常に重要になります。
ツール選定
CRMツールの選定をする際には、自社のビジネス分類と必要な機能を整理を行い、最適なツールが何かを整理します。
事前整理
タッチモデル別のカスタマー数の把握
カスタマーは大きく分けて「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに分類できます。カスタマー数は少なく顧客価値は高い「ハイタッチ」であり、カスタマー数が多く顧客価値が低い「テックタッチ」になります。
1カスタマーあたりの顧客価値は低い「テックタッチ」でもカスタマー数が多いため、数が集まると自社の売上に大きく影響してくるカスタマー群になります。このテックタッチは、CRMツールのようなテクノロジー主体でコミュニケーションをとっていきカスタマーサクセスを実現させます。自社のカスタマーで「テックタッチ」に分類されるカスタマー数がそこまで多くない場合は、CRMツールを活用したカスタマーサクセスの実施は費用対効果が得られないかもしれないので導入自体を見送る選択肢もあります。
CRMツールの機能分類
CRMツールは「カスタマー管理」「自社管理」「コンテンツ作成」「チャネル配信」と大きく分けて4つに分類されます。自社のビジネスに必要な機能に何があるのか項目毎に整理していきます。
| 分類 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| カスタマー管理 | 基本情報管理 | カスタマーのデモグラフィックやジオグラフィックなどの基本情報の管理 |
| カスタマー管理 | オンライン行動履歴管理 | Cookie情報と紐付けた、オンライン上での行動履歴を管理・利用する |
| カスタマー管理 | オフライン行動履歴管理 | イベント参加等オフライン行動の情報を取り込み管理・利用する |
| カスタマー管理 | 取引履歴/契約管理 | カスタマーが自社ブランドを購入(契約)した情報の管理 |
| カスタマー管理 | ダッシュボード機能 | CRM活動の各種プロセスをデータで可視化する |
| カスタマー管理 | MA/SFA連携 | CRMで蓄積したデータをMAやCRMに連携する |
| 自社管理 | 活動管理 | 自社のカスタマーサポート業務の活動履歴の管理 |
| コンテンツ作成 | チャットボット作成 | カスタマーの疑問に答えるためのチャットボットの作成 |
| コンテンツ作成 | アンケート作成 | カスタマーに対してアンケートを取得するためのアンケートフォームの作成 |
| コンテンツ作成 | フォーム作成 | アップセル・クロスセルなどを目的としたフォームの作成 |
| チャネル配信 | シナリオ作成 | 特定のアクションを起こした際に自動実行するシナリオの作成 |
| チャネル配信 | ターゲティング機能 | 特定のリードのみに絞ってキャンペーンの設計や実行を行う |
| チャネル配信 | メール作成・配信 | 作成したシナリオに基づいて配信するメールの作成を行う。また期間を軸にしたステップメールの配信の実施も可能 |
| チャネル配信 | SNS連携 | SNSを利用した情報発信の実施 |
| チャネル配信 | WEB接客 | WEBサイトに訪問したユーザーかつ特定の条件に当てはまるカスタマーに対してオンライン接客を行う |
ツール選定
タッチモデルや必要な機能が整理できたら自社ビジネスに合うツールの選定を行います。
導入実装
CRMツールの選定が終わったらCRMが利用できるように、CRMツールの実装を行っていきます。実装は全部で「環境構築」「データ連携」「データ処理」「チャネル連携」「セキュリティ設定」「データマネジメント」の6つのステップで実行していきます。
環境構築
顧客データを取り扱って配信を行うため情報の取扱いには慎重にならないといけません。そのため開発環境と本番環境を2つ用意し、意図した配信ができる環境が準備できているかを検証するために開発環境を用意します。
データ連携
CRMツールにデータを連携する設定を行います。データ連携を行うためには、連携システム、連携頻度、連携方法の3つの項目に対して整理を行っていきます。
| 連携システム | CRMツールに連携したいシステムがオンプレミスもしくはクラウドサーバーなのか、どのデータベースとデータを連携するのか定義します |
| 連携頻度 | どの頻度で顧客管理システムからCRMツールにデータを連携するのか定義します。日次や月次のバッチ処理やリアルタイムでの連携など、データの項目ごとに連携頻度を設定します。 |
| 連携方法 | データの連携方法を定義します。連携方法は手動で行うか、自動で行うかの二択になります。 |
データ処理
連携された顧客データはCRMツールで利用できるように処理を行う必要があります。顧客データを配信リストとして活用するためには、顧客マスタの更新、除外管理、配信化の顧客の抽出が必要になります。
| 顧客マスタの更新 | 顧客管理システムで新規追加または変更されたリストをCRMツールの顧客マスタに反映できるように設定を行います |
| 除外管理 | 顧客管理システムには配信に合意した顧客(オプトイン顧客)と配信を拒否した顧客(オプトアウト顧客)が含まれるため、CRMツールに連携された顧客データからオプトアウト顧客を除外します |
| 配信可能顧客の抽出 | 顧客マスタから、除外リストを覗いた顧客リストが配信可能顧客になります |
チャネル連携
自社で扱っている様々なメディアと連携を行います。CRMツールで管理している顧客IDと各チャネルツールで管理している顧客IDが照合できる仕組みを構築することが重要になります。
セキュリティ設定
顧客情報の漏洩などは企業の信用毀損につながります。そのため、しっかりとセキュリティ対策をしておく必要があります。
| IPアドレス制限 | 顧客データと連携されているCRMツールやSFTPサーバーにはIPアドレスの制限を設定します |
| データ通信の暗号化 | 顧客データが管理されているデータベースからCRMツールに個人情報を連携する際にセキュリティ上の安全性を高めるためにSFTPによるデータ連携を行います。 またCRMツールから配信されるメールも個人情報漏洩のリスクがあります。メールサーバー間の通信やコンテンツのSSL化を実施します。 |
| 個別ユーザー権限 | CRMツールの設定や閲覧といった権限を役割に応じて設定します。一般的に役割には「管理者」「シナリオ設定者」「コンテンツ設定者」「アナリスト」があります。 |
| 個人情報の暗号化 | CRMに連携された個人情報を閲覧できないように暗号化やマスキング処理を実施します。 |
| 操作ログの収集 | 情報漏洩リスクに備えて、CRMツール利用ユーザーの操作ログを収集し、ログイン履歴や個人情報を含むデータが出力されていないかチェックできる状態にしておく。 |
データマネジメント
CRMツールに関わるステークホルダーに向けて、データ項目定義書を作成します。定義書に記載する項目としては、大きく分けて5つの項目に対して整理しドキュメントにまとめます。
| データベースの数 | CRMツールで利用できるデータが格納されているデータベースの数 |
| データ連携状況 | 利用しているデータベースが複数ある場合、主キーで連携可能か連携可能な場合、何か主キーになるか |
| データ内容 | データベースに格納されているテーブル情報や各データ項目 |
| データ更新方法 | 各データ項目の更新が自動なのか手動で更新されているのか |
| データ更新頻度 | 各データ項目の更新頻度がリアルタイムなのか日次、週次、月次のようなバッチ処理なのか |
シナリオプラニング
CRMツールの導入ができたら自社のビジネスを分析し、必要なシナリオを洗い出し設計していきます。顧客のカスタマージャーニーを整理し、どのカスタマーサクセス活動をCRMを使って自動化していきたいのかを整理します。
自社分析
シナリオプランニングにおいてまず始めに自社の現状を把握します。カスタマーサクセス活動はサービス契約後の活用支援から満足による契約範囲の拡大・カスタマーによる推奨までが一連のフローになります。
| フェーズ | 項目 | 指標例 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 育成・支援 | オンボーディング | オンボーディングスルー数・率 | カスタマーに対して、サービスのファーストステップのフォローを行う |
| 育成・支援 | サポート | カスタマーフォロー数・率 CSAT | サービスを利用するカスタマーの疑問に対してフォローを行う |
| 育成・支援 | アダプション | アダプション数・率 CSAT | サービスを利用するカスタマーがサービスに適応・熟達できるようにフォローを行う |
| 収穫 | リニューアル リテンション | リニューアル数・率 リテンション数・率 | サービスの契約を継続してもら |
| 収穫 | エクスパンション | アップセル数・率 クロスセル数・率 | 既存契約より上位のサービスや関連サービスの契約をしてもらう |
| 収穫 | ロイヤルティ/アドボケイト | NPS 口コミ数・率 | サービスに愛着を持ち他社に推奨を行う |
カスタマーにもいくつか種類があり、同じプロダクトを引き続き購入・継続契約する「リニューアル・リテンション」、買い続けるのをやめてしまった「チャーン」、同じプロダクトをより多く買ってもらうもしくはアップグレード商品を買ってもらう「アップセル」、違うプロダクトも買ってくれる「クロスセル」の4種類に分けられます。また、リニューアルとチェーンの合計を「グロスリテンション」、これにアップセルとクロスセルを加えた数を「ネットリテンション」と呼びます。
自社ブランドを契約してくれているカスタマーの各フェーズのステータス状態を数値化して、自社ブランドのカスタマー活動を数値化します。各フェーズにおいてチェーンが発生するため、それぞれのフェーズでどれだけチェーンが発生しているかも数値化します。
またカスタマーサクセスにおける各フェーズから次のフェーズに移行する場合は、そのフェーズに移行するまでにどれくらい期間を要したのかも把握しておくことで、シナリオ間のリードタイムが把握しやすくなります。
シナリオターゲットの抽出
自社ブランドのカスタマーサクセス活動の現状が整理できたら、CRMで作成するシナリオのターゲットを整理します。シナリオのターゲットを決める際には、CRMで果たしたい最終ゴール(リニューアルやアップセル/クロスセル)に対してセグメントを区切って、ターゲットを絞りこみます。
| セグメント | 自社ブランドのターゲットとなる顧客をデモグラフィック・ジオグラフィック・サイコグラフィック・ビヘイビアの4軸で区切り、それぞれのセグメント毎の数値を整理します。 |
| ターゲティング | 区切ったセグメントからシナリオを作成するターゲットを選定します。ターゲットを選定する際は4Rを意識します。 |
セグメント
セグメントはデモグラフィック・ジオグラフィック・サイコグラフィック・ビヘイビアの4つの観点から区切ることができます。自社が保有しているリストのデータを使って区切れるセグメントを活用します。CRMツールはユーザーの行動履歴に合わせてシナリオを構築することでより高いパフォーマンスを発揮するため4つの観点の中でもビヘイビアのセグメントは最も重要です。
| セグメント | 項目 | 内容例 |
|---|---|---|
| デモグラフィック | 性別 | 男性・女性・その他 |
| デモグラフィック | 年齢 | 年代・年齢 |
| デモグラフィック | 家族構成 | 未婚既婚・子供の有無 |
| デモグラフィック | 学歴 | 中卒・高卒・大卒・院卒 |
| デモグラフィック | 職業 | 役職・仕事内容 |
| デモグラフィック | 年収・資産 | 金額 |
| デモグラフィック | 可処分所得・時間 | 金額・時間 |
| デモグラフィック | 企業情報(toB) | 業種・業界・従業員数・売上高 |
| デモグラフィック | ゴール・課題(toB) | 目標・課題・責任範囲 |
| ジオグラフィック | 居住地 | 地域・都市規模・人口密度・沿線・最寄駅 |
| ジオグラフィック | 居住形態 | 同居家族・賃貸持ち家 |
| ジオグラフィック | 勤務地 | 地域・都市規模・人口密度・沿線・最寄駅 |
| ジオグラフィック | 気候 | 温暖寒冷・気温・天気 |
| サイコグラフィック | 心理傾向 | 性格 |
| サイコグラフィック | 趣味嗜好 | 趣味・興味関心 |
| サイコグラフィック | 価値観・ライフスタイル | 大切にしていること・幸せの定義 |
| サイコグラフィック | 社風(toB) | 企業の価値観・企業独自の雰囲気 |
| ビヘイビア | 消費・購買傾向 | よく行くエリアやお店・購買状況・利用用途・利用頻度 |
| ビヘイビア | 情報収集傾向 | 情報入手メディア・使用デバイス・利用シーン |
| ビヘイビア | 利用交通手段 | 電車・バス・自動車・自転車・徒歩 |
カスタマーのセグメントを区切る際に参考になる分析フレームワークがあります。分析フレームワークを活用することで自社にとって優良な顧客をあぶりだすことも可能になります。
| 分析分類 | 分析手法 | 内容 |
|---|---|---|
| 単変量解析 | ABC分析 | 売上の高い順に商品を並べ、棒グラフと、高い順に足し上げていった売上高累積構成比を表わす分析手法 |
| 単変量解析 | デシル分析 | 顧客の一定期間中の購入金額を算出して合計額が多い順に並べ、10等分にクラス分けして分類する顧客分析手法。RFM分析の簡易版 |
| 単変量解析 | パレート分析 | 構成要素を大きい順に並べた棒グラフと、それらの累積量(全体に対する百分率)を示す折れ線グラフを組み合わせることで、上位の一部要素が全体にどのくらい貢献しているかをみる分析方法 |
| 二変量解析 | PB分析 | それぞれ定価で購入する顧客とセール時に購入する顧客を分けて、全体の売上げにおける比率把握 |
| 多変量解析 | CTB分析 | Category(カテゴリ)、Taste(テイスト)、Brand(ブランド)の3つの指標で顧客を分類する方法。カテゴリはレディース、メンズ、子供、生活、食品などの大分類や、ファッション、アンダーウエア、インテリア、キッチンなどの中分類、さらに細分化した小分類などを用います。テイストとしては、色、模様、形、風合い、サイズなども含まれ、ブランドにはキャラクターなども含めます |
| 多変量解析 | RFM分析 | 3つの指標を用いて顧客をグループ分けする顧客分析方法。Recency(直近いつ)、Frequency(頻度)、Monetary(購入金額)で、RFM分析という名称はこれらの頭文字を取ったもの |
| 多変量解析 | RFMC分析 | RFM分析で算出される最適化されたグループを、購入商品別、顧客属性別(新規顧客、休眠顧客、安定顧客、優良顧客、ロイヤル顧客)で分けることで、より精緻な顧客を分類 |
| 多変量解析 | RFMD分析 | エリア情報をRFM分析に組み合わせる手法 |
ターゲティング
ターゲットを選定する際は、4つの項目の頭文字をとった4Rを意識します。またターゲットは1つに絞る必要性はありません。自社ブランドと関係性の高いセグメントを複数選定することで、自社ブランドのペルソナ像として数パターン用意することができます。
| Realistic | 有効な規模・人数がいるか |
| Rank | 優先度が高いか |
| Reach | 顧客に到達できるか |
| Response | 結果が測定できるか |
顧客になる見込みが高い顧客でも規模が小さければ事業に貢献できる効果は見込めません。CRMツールの導入や利用には費用がかかるため効果が見込めない場合、費用対効果はマイナスになってしまいます。また対象者が少ない場合は、効果検証も十分にできないため、対象ターゲットのボリュームは重要な指標の1つになります。
また、対象ターゲットが優先度の高いターゲットになっているか到達可能性に問題ないかにも注視します。どんだけボリュームがあっても、目的を果たすのが難しい顧客の場合、ターゲットとしては適しません。そしてどんな優れたターゲットでも自社で保有しているデータではセグメントを区切ることができない条件や相性の悪いチャネルを活用していては、ターゲットに情報を届けることができません。そのためターゲットの質とコンタクト可能性についても確認する必要があります。
コミュニケーションプラン作成
シナリオターゲットの整理ができたら、各ターゲット毎にシナリオを作成していきます。シナリオのゴールはマーケティングフェーズのホットリストや顧客化に繋がることになります。そこまで到達するのにユーザーの行動履歴に合わせてシナリオを構築していきます。シナリオ設計時には5つのポイントを整理します。
| One to One設計 | 経路(パス)条件の設定 |
| チャネル | どのコミュニケーションチャネルを使用するか整理 |
| コンテンツ | 各チャネルから入ってくるコンテンツの整理 |
| 接触頻度(フリークエンシー) | 顧客へ接触する最大頻度の整理 |
| 終了タイミング | シナリオから離脱するタイミングの整理 |
One to One設計
1つのシナリオの中で顧客の詳細な属性や行動に応じて、接触するチャネルや提供するコンテンツを分別します。シナリオターゲットに対して、一人一人に即したメッセージを届けることができるように分岐条件を整理しフローチャートを作成します。
最終的な目的に対して、作成するシナリオでどれくらいのCV数を得たいのかから逆算して、各マーケティングフェーズでの目標数値の整理含めシミュレーションも作成します。
チャネル
ユーザーにメッセージを届ける手段を決めます。1つのチャネルだけではなく、複数のチャネルを使ってコミュニケーションを取ることでアプローチできるユーザー数も増えます。施策の特徴や顧客の属性に合わせて各チャネルを選定します。
| メディア分類 | アプローチ分類 | メディア名 | アプローチ可能セグメント | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| オウンド | PUSH | メールマガジン | 配信許諾を取得しているユーザー | 自社のメールマガジンを購読しているユーザーに対してメールマガジン形式の文章を配信することが可能 |
| オウンド | PUSH | アプリPUSH | 配信許諾を取得しているユーザー | 通知を許諾しているユーザーに簡易的な画像と簡易的な文章をPCやスマートフォンの画面上に通知を送ることが可能 |
| オウンド | PUSH | SMS | 配信許諾を取得しているユーザー | 通知を許諾しているユーザーに文章をスマートフォンの画面上に通知を送ることが可能 |
| オウンド | PUSH | コール | 電話番号を取得している自社顧客 | コールセンターから顧客に直接、電話をかけることで柔軟な対応が可能 |
| オウンド | PULL | サイト/アプリ掲載バナー | サイトを閲覧しているユーザー | 自社のサイト・アプリを閲覧しているユーザーに対して告知バナーを掲載しておくことで、興味あるユーザーにアプローチすることが可能 |
| オウンド | PUSH/PULL | SNS | 自社SNSをフォロー・閲覧しているユーザー | 自社のSNSをフォローや閲覧しているユーザーに対して動画・画像・音声を使って情報発信することが可能 |
コンテンツ
チャネルを通じて、ユーザーに詳細な情報を提供するのがコンテンツになります。チャネルによって提供できるコンテンツの種類は変わってきますが、各マーケティングフェーズに合わせて提供するコンテンツを整理します。
| 会社概要 | ・企業情報 |
| 最新情報 | ・お知らせ |
| 事業内容 | ・展開している事業内容 |
| サービス・商品説明 | ・商品やサービス情報 |
| 実績紹介 | ・事例紹介 ・お客様の声 |
| よくある質問 | ・顧客から問い合わせが多い質問に対しての回答集 |
| コラム | ・ブランドに関連する記事 |
| キャンペーン | ・プロモーション情報 ・商品やサービス情報 |
| 採用情報 | ・求める人物像 ・社員紹介 ・採用情報・フロー ・募集職種 ・福利厚生 |
| 代表メッセージ | ・会社の立ち上げストーリー |
| アクセス | ・所在地までのアクセス方法 |
| 免責事項 | ・プライバシーポリシー |
| IR | ・業績・財務 ・ライブラリー ・株式情報 ・コーポレートガバナンス |
| CSR | ・活動内容 |
接触頻度(フリークエンシー)
様々なチャネルを通してユーザーと接触することが可能になるため、ユーザーとの接触頻度は高くなりがちです。しかし同じメッセージを何度も提供すると自社ブランドに対してのネガティブイメージに繋がります。また接触頻度が増えれば増えるほど顧客からの反応は薄くなりますので、1メッセージに対して1ユーザーあたりに接触する頻度を調整します。
終了条件
シナリオからのアプローチを終了するための顧客の離脱条件を決めます。アプローチを終了する条件としては、シナリオによって様々ですが目的を達成した場合や目的の達成見込みが無いと判断した場合にシナリオからドロップアウトさせ、リサイクルリストの中に含めるようにします。
| 分類 | 項目 | 終了条件 |
|---|---|---|
| 目的達成 | 目的達成 | シナリオの最終ゴールに到達した時 |
| 目的達成見込み無し | 接触頻度 | 接触頻度が上限に達した時 |
| 目的達成見込み無し | 反応無し | 複数回アプローチしても顧客からの反応を得られなかった時 |
| 調整 | オプトアウト | 配信拒否が入ったユーザー |
| 調整 | ブラックリスト | 自社ブランドに適さないユーザー |
| 調整 | 他シナリオ優先 | 他に配信しているシナリオが優先された時 |
CRMツール設計・実装
シナリオプランニングが完了したら、そのシナリオを実際にCRMで機能するようにCRMツールに実装を行なっていきます。CRMツールに実装して配信まで行うには大きく分けて4ステップで実行していきます。
ターゲットリスト抽出
施策ターゲットとなるユーザーのリストを抽出します。ステークホルダー間でターゲット条件の確認が必要な場合は、処理フロー図を作成して共有します。
またターゲットリストを作る際は、ターゲットに該当するけど配信をしないコントロール群を作成します。コントロール群を作成することで、施策を実施した時と実施しなかった時を比較することができ、施策実施による効果を把握しやすくなります。
シナリオ設定
施策ターゲットに対して、シナリオプランニングで設計したシナリオを実装します。
チャネル・コンテンツ設定
シナリオで分岐させた先にCRMと繋がっているチャネルとそのチャネルで配信できるコンテンツを設定します。
配信設定
必要な設定ができたら配信設定を行います。ユーザーに配信する前にはテスト配信(結合テスト)をすることで、配信設定が間違っていないか確認することができるため、テスト配信を実施することを推奨します。
テスト配信を行う際には、テスト配信時に確認する項目を「テスト配信設計書」に整理してからテスト実施をすることで、ステークホルダー間でテスト内容の合意や共有を行いやすくなります。
また運用においてはトラブルが発生してしまうことがあります。トラブルが発生してから対応策を検討するのでは無く、予めトラブル発生時の対応書も整備しておくと配信後のトラブル対応もスムーズになります。
効果測定・改善
CRMで設定したら終わりではありません。各シナリオの効果測定をしっかりと行い改善活動を通して、より最適なシナリオへ改善していきます。
効果測定
CRMでシナリオ配信を行った結果のデータを収集します。データを収集する際はシナリオプランニングで立てた目標に対して、目標を達成できたのか否かの観点でデータを収集するようにします。また、各シナリオでの配信でコントロール群を作成している場合は、配信個別に実施有無による効果差異を確認し、配信効果を把握します。
個別に配信毎、シナリオ全体で共通して取得する指標はIMP(配信数)・CV(CVR)を取得します。
| IMP(配信数) | 各チャネル毎の配信数やインプレッション数 |
| 配信成功者数・成功率 | 各チャネルで配信を予定していた数のうち配信が成功した数 |
| 開封数・開封率 | 配信したチャネルでチャネル内のコンテンツが閲覧された数・割合 |
| CT(CTR) | 配信したチャネル毎のクリック数・率 |
| CV(CVR) | 配信したチャネル毎のCV数・CV率 |
要因把握
効果測定ができたら目標に対してビハインドしているシナリオや個別の配信毎に対して、ビハインド要因を探ります。ビハインドの要因を探る際は、シナリオ全体、最終目的に近い個別の配信という、目的に対して影響度の高い所を優先度を高くして要因を特定していきます。
| IMP | IMPの数が想定より低い場合は、どのターゲットセグメントで想定のIMPが獲得できなかったのかを把握します。 |
| CTR | CTRが想定より低い場合は、CTRが低い要因を把握します。 <要因特定候補> ・配信セグメントとのマッチ率 ・配信時期/時間 ・フリークエンシー |
| CVR | CVRが想定より低い場合は、コンテンツのどこにボトルネックがあるかを把握します。 <要因特定候補> ・滞在時間 ・スクロール度合い ・クリック(タップ)要素 ・アテンション ・マウスフロー |
改善施策検討・実行
要因を把握できたらそのポイントに対して、改善施策を検討します。IMP・CTRがボトルネックになっている場合はチャネルを、CVRがボトルネックになっている場合はコンテンツに対して、改善案を検討します。
| チャネル改善 | ・チャネルアロケーション ・ターゲットセグメントの変更 |
| コンテンツ改善 | ・コンテンツの拡充 ・コンテンツの並び替え ・コンテンツの縮小・カット |
施策を実施する場合は、ランダム比較化実験(ABテスト)や実験計画法、多変量解析など施策実施が効果をもたらしてるのか振返るができるような状態を作れることが理想です。
まとめ
自社ブランドの売上は新規顧客か既存顧客のいずれかで構成されています。ただ新規に掛ける販促コストは既存顧客に掛ける販促コストの5倍と言われており、利益率を上げるためには既存顧客の販促活動が重要になってきます。
既存顧客との関係づくりにはカスタマーサクセスが重要であり、そのうちの1つにCRMツールを活用してカスタマーコミュニケーションを最適化する方法があります。カスタマー1人1人とコミュニケーションを取れるのが理想ですが、そのためのリソースが張れない場合は、テックツールを活用し、カスタマーの行動に合わせて最適なコンテンツを提供することで、カスタマーの成功に寄り添うことができるようになります。
参考文献
今回の記事を書くに当たって参考にさせて頂いた文献一覧。

